蟹の横歩き

子蟹の這ってゐるのを、みてゐた親蟹は苦い顏をして言ひました。

「それはまあ、何てあるき方なんだい。みっともない」

「どんなにあるくの」

「眞直にさ」

從順な子蟹は教へられたやうに試みました。けれどどうしても駄目でした。で

「あるいてみせておくれよ」

「よし、よし。かうあるくもんだ」

親蟹は歩きだしました。すると、こんどは子蟹が腹をかかえて噴出しました。

「それじや矢張り、横だあ」


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