犯人だと分かったのは出会って2分後です。
「あなたは最初から、わたしを犯人だと決めつけていましたね。いつからです。」
「その通り、あなたが犯人だと分かったのは出会って2分後です。」
「そんな、はずはない。」
「いいえ。一緒に食事を指定た相手が毒で死んだと警察が呼び出したのに、それがあなた。真っ直ぐ来たとおっしゃった。普通なら警察の事情聴取より自分の身を心配するもんですよ。それなのに、来る途中で医者にも寄らず、我々に医者を呼んで欲しいとも云わなかった。それで分かったんですよ。」
刑事コロンボ『美食の報酬 ( Murder under Glass )」は第7シリーズの第2話。料理評論家のポール・ジェラード(ルイ・ジュールダン)氏がレストランのオーナー、ヴィットリオ・ロッシ(マイケル・V・ガッツォ)を殺害する。
テレビ番組や CM でも有名なジェラードが、その名声を利用してレストランの評価を思いのままに操っていることに腹を立てたビットリオの口を封じたのです。
この犯行に使ったのがワインのコルク抜きに仕組んだふぐの毒。言い争ったあと犯人は退出。被害者はグラスのワインを飲んで、しばらくしてから息をつまらせて死んだ。
まず、この毒で絶命する時の演技が迫力ある。マイケル・V・ガッツォは、ゴッド・ファーザー Part Ⅱ に出演。日本語版吹き替えは「あしたのジョー」のおっつぁん「丹下段平」役でも有名な藤岡重慶さん。演技と吹き替えが相乗効果で豪快なイタリア人シェフの存在感がでている。
プロットはシンプル
ふぐの毒を使うこと。有名なイタリア人シェフということから、日本食にコロンボが招かれたり、『この事件を刑事さんが捜査中はヒモジイ思いはさせません』とコロンボの行く先々で豪華で盛り付けの綺麗なイタリア、フランス料理が登場して画面を彩る。
『出会って2分で分かった』という強固な理由付け。毒を使った犯行であれば、犯人と被害者の関係や、どういう所属の職業だろうが、なんでも構わない。冒頭のやり取りと、ラストシーンで、その言葉に犯人が負けを認めれば良い。
自由に90分間の間に盛り込めて楽しかっただろう。最後に犯人はコロンボにも同じトリックで毒入りワインを飲まして殺してしまおうとさえした。
ここでのコロンボの名台詞が有る。
I respect your talent, but I don't like anything else about you.
「あなたの才能は素晴らしいが、後はてんでイケません」の台詞は、犯行を叱咤しているようで居てピーター・フォークが自身を戒めているようにも思える。
この『美食の報酬』は刑事コロンボシリーズ、全69話の第42話に位置する。それまでシリーズを手がけてきたレビンソン&リンクやフィッシャーが毒殺を本格的に採用しなかったのは、直接手を下さない間接性や、その陰湿なイメージがシリーズにそぐわないとタブーとしてきた感がありますが、どことなく厭らしか犯人の演技、ミステリー気分満点の脚本とテンポの良い演出で何度観てもあきさせない。
脚本のロバート・ヴァン・スコイクは本作の脚本でエドガー賞の最優秀TVエピソード賞を受賞。監督はジョナサン・デミで、のちに映画『羊飼いの沈黙』でアカデミー作品賞、監督賞を受賞しているのだから納得だ。
コロンボはピザより餃子が好き
コロンボ登場シーンの導入で中華料理店が登場して、女性との対話でコロンボはピザより餃子で育ったと言っている。フグ毒の説明のためではあるが、日本料理店にコロンボは招かれて芸者さんに出会う。
被害者が死亡するところに立ち会った唯一の証言者。この若い料理人見習いは、米国に来たばかりで言葉がわからず、イタリア語をコロンボが通訳する。当然、イタリア人シェフたちとはコロンボは親しげ。このエピソードにはミステリーの謎解きに終わらない、国民性の違いについてなにか言いたげなところも感じる。
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